小規模企業共済について考察してみる
2019/06/13
読者さんの中でも、小規模企業共済に加入している方は
かなり多いのではないでしょうか?
また、加入しようか検討している方も多いと思いますし、
少なくともこれから売り上げを伸ばし、どんどん規模が大きくなれば
いつかは必ず耳にする言葉かと思います。
ただ、小規模企業共済に関してはメリットばっかりクローズアップされて
デメリットの部分があまり出てこないのも考えものです。
そこで、僕なりに小規模事業共済についての考察をまとめてみます!
毎度のことですが、専門家ではありませんので、
素人の戯言だと思ってご覧ください^^
もくじ
小規模企業共済とは
まずは簡単におさらい。
『小規模企業共済』とは『中小企業整備基盤機構』が運営している共済制度です。
簡単に言えば、個人事業主、または小規模企業の役員に向けた
『積立制度』です。(厳密は違いますがイメージ的には)
毎月任意の額(1000円〜70000円)を積み立てていき、
会社の廃業、本人の死亡時、退職金として、解約して一時金として、
これまた任意のタイミングで引き出すことができます。
小規模企業共済が人気の理由は、この『毎月の積立金』が
全額所得控除(正しくは小規模企業共済等掛金控除)されることです。
いろんなパターンがあるので一概には言えませんが、
結論、節税効果があるのです。
例えば、毎月50万の利益が出ているとして、
一年で600万。個人事業主ならば、ここに所得税が発生しますよね。
(法人のケースは役員報酬で考えてください)
仮に毎月5万円の小規模企業共済に加入していた場合、
毎月の利益から5万円が経費扱い(厳密に言うと事業主貸勘定)で引かれますので、
月の利益は45万円になります。
年間で540万。ここに所得税がかかるわけです。
つまり、60万円分の所得税を回避しているのですね。
そして、30年後ぐらいにそれまで積み立てた1800万(5*12*30)
を退職金扱いとして支給するとします。
すると退職金の税制の方が所得税よりも優遇されているので
共済に加入していなかった場合と比べて、
結果的に払うお金が少なく済むことになります。
このような節税効果があるために
『利益が出てしまって税金を多く払うぐらいなら、
積み立てておいたほうが得だよね』
ってことで大人気なんですよね。
一方で『それは単に税の支払いを繰り延べ(先延ばし)してるだけだ』
などの意見もあり、実際どっちなのか?に揺れている人も
それなりにいると思います。
この前置きを踏まえた上で、
小規模企業共済のメリットデメリットを見ていきましょう。
小規模企業共済のメリット
掛金分が節税になる
前述した通り、小規模企業共済の掛金は全額所得控除になります。
ですから、その年に本来払う分だった税金を掛金の分だけ回避できます。
もちろん、後々そのお金を受け取る際には税金がかかるのですが
積み立てにプラスして節税になるのは相当大きなメリットです。
最大120%になって戻ってくる
将来共済金が戻ってくる際には、納付期間によって
返戻割合が変化します。
元本割れの件については後述しますので、
元本以上の納付期間を小規模企業共済の約款からまとめると
こんな感じになります。
つまり、240ヶ月(20年)で返戻割合が100%になり、
約40年で110%、60年(笑)で120%相当額を受け取れます。
現在30歳の方なら、70歳まで継続することができれば
110%受け取れますので、万々歳ですね。
受け取り時にも節税効果がある
支払いの際にも節税効果がありましたが、
なんと受け取り時に関しても節税できちゃいます。
個人事業主の場合、共済金を解約して受け取るお金は
『退職所得』になりますので、
事業所得などに比べてかなり税負担が軽くなります。
具体的にはこんな計算ですね。
(事業所得の場合)
売上ー経費=所得
(退職金の場合)
(退職金ー控除額)×1/2=所得
事業所得に比べて、控除額が引かれている分と
何より×1/2がでかいです。
万が一の際に借り入れができる
小規模企業共済には『契約者貸付制度』が存在するため、
積み立てている金額内ならば、資金を借り入れることができます。
例えば、月に5万積み立てで10年の支払いをしていた場合、
それまでにプールしてある600万円を上限に借り入れが可能です。
有事の際には便利かもですね。
*返済条件がなかなかに厳しいので利用の際は計画的に
小規模企業共済のデメリット
キャッシュが減る
あたり前の話なのですが、意外と見落としがちです。
共済に積み立てた分のキャッシュはすぐに引き出せません。
計画的に積み立てないと、共済のせいで資金が足りなくなる。
なんて本末転倒な問題が発生する可能性もあります。
そもそも、我々ってどちらかと言うと
『貯金なんてしないでどんどん投資に回していった方がいいじゃん!』
派が多いわけじゃないですか。
実は、小規模企業共済ってそれに逆行しているんですよね。
もちろん、守備も大事ですがバランスを見誤ると、
将来のためにしている金策が自分の首を絞めることも十分にあります。
元本割れのリスクがある
前述しましたが、納付期間によって返戻割合が定められており
100%以下の返戻割合の分布は約款によると以下のようになっています。
(イメージしてもらいたいだけなので大分ざっくりまとめました)
まず大事なのは12ヶ月未満で共済を解約すると
『1円も戻ってこない』と言うことですね。
まぁあまりないと思いますが、
かなり損なパターンです。
同時に、240ヶ月未満で解約した場合は、
元本割れしてしまいます。
240ヶ月って20年です。
厳密には共済の種類によって20年未満の解約でも
満額受け取れるパターンもあるのですが
多くの場合は20年未満で解約すると元本が割れると思っておきましょう。
節税効果がかなり減るケースがある
小規模事業共済を解約する際にはその所得が『退職所得』扱いになって、
税制上有利ですよって話を先ほどしたのですが、
実は受け取る請求事由によっては『退職所得』ではなくて
『一時所得』の対象になることがあります。
(65歳未満での解約、滞納での強制解約など)
ちなみに共済金を受け取る際の税金上の扱いには4パターンあります。
中小機構のHPにある表を貼り付けます。
上記表の下の2つですね。一時所得扱いになるのは。
国税庁が出している一時所得の計算式は
一時所得の金額=総収入金額—収入を得るために支出した金額—特別控除額(最高50万円)
⇒他の所得と合算するときに、上記計算結果をさらに1/2する。
と言うものでして、これだけ見ると退職所得の計算とほぼ同じで
特段損をしている気配はないです。
が、小規模共済の場合は、それまでに支払った掛金に対して控除が発生しているので
上記の『収入を得るために支出した金額』として計上することができません。
つまり
一時所得の金額=総収入金額—特別控除額(最高50万円)
⇒他の所得と合算するときに、上記計算結果をさらに1/2する。
計算式がこうなりますので、
事実上、それまでに受けた控除がかなり意味のないものになります。
まとめと考察
いかがでしたでしょうか?
全部ではありませんが、メリットとデメリットを挙げました。
気になる人、もっと知りたいって人はぜひ色々と調べてみてください。
僕がかなり端折って説明していることがわかるはずです笑
で、ここからは僕個人的な考察、と言うか考えですが、
僕個人としては小規模企業共済に関しては入るつもりがないです。
入ったら損をすると思っているわけではなく、
『入っても入らなくてもまぁどっちでも変わんねーや』
と思っているからです。
もっと言えば、小規模企業共済に加入するなら、
別の経営者用の保険に入る方が良いかなぁと思っています。
小規模企業共済に入る目的にもよるのですが、
仮に退職金目的なのだとしたらそこまでオススメはできないです。
そもそもこれだけ移り変わりの激しい世の中で、
後20年以上も事業を続けられる保証がどれだけあるのか?
(そもそも円の価値は保証されているのか)
それを考えたときに、であれば多少多めにお金を払っても
実弾(キャッシュ)をしっかり手元に置いておくか、
再投資する方が総合的に守備力高いんじゃないか?って僕は思うんですよね。
もちろん、自分が死んだ時用とか、そっち方面で考えるなら
ありだと思いますが。(でも、だとしたら保険の方が良いんだよなぁ)
まぁでも、僕自身も良く
『貯金をしてそれで精神が保たれるのであれば、
貯金だって立派な投資』
って言ってますので、そう言う要素も強いと思うんですけどね!
なので、メリットデメリットをしっかり把握した上で
フィーリングで決めるのがグッドだと思います^^
ただし『税金払いたくないから』だけで決めるのはやめた方が良いです。
税金払った方が良いことも沢山ありますからね。
そのほかの要素も含めた上で検討するようにしましょう!!